Nikon Df を初めて知った時のインパクトは 昨年の Zf の比ではなかったと記憶している。
Nikon D3 あたりからの、アブドーラ・ザ・ブッチャーのようなペンタ部造型やNikonこだわりのレッドラインにどうしてもなじめずに、旧き良きNikonの再来をずっと待ち望んでいたからだ。
特にシルバーは Nikon FM/FEシリーズを彷彿とさせて、これは手に入れなければ！と思い、Df のムック本まで購入したものだった。初代 FM/FE同様に、最初期のNikkorレンズまで使える初のデジタル機という事も琴線に触れるコンセプトだった。
Df / AF Nikkor 80-200mm F2.8 D / PORTRA160
実機にまみえるまでに頭の中でイメージしていたのは、少し分厚くなった FM/FE、というものだった。まあ分厚くなるのはデジタルだから仕方ないか、と。
発売から暫く経ってから、実機を見るために量販店の店頭に出向いた。
そしてそこで目にしたのは沢山の手で触られて、塗装のハゲてしまったDfだった。
何これっ？こんなに簡単に塗装剥がれちゃうんだ！そして塗装の剥がれた部分はドンヨリと鈍い色のマグネシウムの地金が・・。はっきり言って、汚なって思った。
夢は一気に覚めた。後藤フェローの苦肉の妥協だったんだろう事は理解出来る。
黒い方も大同小異。同じく塗装が剥がれた下は灰色のマグネシウム地金だった。
結局 Df は旧き良き時代をオマージュしているものの、少なくともその外装はフェイクであり、（もっとも中身はデジタルでそちらもフェイクと言えるが）私が夢に描いていたスチームパンクモデルでは無かった。
月日が流れ、Nikon は Z マウントでミラーレスに本格参入、F マウントは事実上終了となった。個人的には Df2 を待つつもりだったけれど、それは決してやっては来ない見果てぬ夢になってしまった。
つまるところ、Nikon フィルム一眼レフをエミュレートしたデジタル機はDf が空前絶後のモデルという事になった。Zf は良くできたカメラだけれど、フィルム一眼レフのエミュレーターにはなり得ないと感じる。いろんな意味でZマウントではそれは困難なのだ。
完成度云々やあるべき論は抜きにして、こうなっては Df は手に入れるしかない機種。という事になった。
シルバー塗装が簡単に剥がれてしまう事は店頭で確認済なので、購入と同時に KAZAの良く出来たたレザーカバーで保護している。
Peak Design のストラップシステムは便利なのでNikonカラーのものを利用しているが、Dfはボディが厚いため、縦フレームで撮影する時にストラップ基部がとても邪魔になることが分かった。いずれ普通の皮ストラップか、三脚穴利用のストラップに変える必要があると感じている。
ベニバナカラタネオガタマ
Df / AF Nikkor 80-200mm F2.8 D / PORTRA160
フォーカシングスクリーンはスプリット式ではないけれどフォーカスも合わせやすく、今回の撮影は AF Nikkor 80-200mm はすべてマニュアルフォーカスで通した。軍艦部の細かなロック付きのダイアル達、見にくいし、液晶パネルの方が使い勝手に分があるのは明らかだけど、Df で撮影していると後藤フェローが、「このカメラは往時のフィルム機のように使ってくださいね」と語りかけてくる。確かにそうだ。爆速AFやAI認識はこのカメラには不要な機能だ。
もっと言うなら背面液晶ですら本来は無い方がこのカメラの立ち位置がはっきりすると感じている。動画機能がないことについて不満が出たと言う人もいるが、このカメラが何者なのかわかっていない意見だと思う。
願わくばアルマイトか真鍮の外装であれば歴史に名を遺す名機になったはずだが、それは詮無い夢だろう。このモデルを遺してくれた後藤フェローにはただ感謝するしかない。今では私にとって手放せないモデルだ。
ちなみに S3 Pro で縦フレーム撮影時にエラーを頻発した AF Nikkor 80-200mm だが、Df ではなんの不具合も無く撮影できた。このレンズとの相性については別個体の S3 Proでさらに検証してみようと思う。
