Foto Anthem

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Aマウントで行こう:ミノルタが夢見た来なかった未来

自室のブラックホールから引きあてた ミノルタ の近未来カメラ α-7 xi にはフィルムが装填されたままだった。このままにしておくのはどうにももったいない事だ。なので暫くの間、久しぶりにこのカメラの未来性能を堪能しようかと思う。

このカメラや更に上位機種だった α-9 xi が発売された1991年~1992年といえばバブル経済崩壊前夜。発売と同時にバブル崩壊が始まった感じだったんじゃないだろうか。その姿形や不思議な未来指向の性能にふくらんで破裂寸前のバブル期の熱狂や暴走が封印された記念碑的なカメラだと思う。

 

ステルス機デザイン:プラカメ時代の集大成

7xiでも十分奇妙なスペースファイターデザインだが、上位機種の 9 xiは更にデザインが極まっている。プラカメ全盛期は奇抜なデザインのカメラが見受けられたがミノルタのxiシリーズの右に出るモデルはないと言える。

α-9 xi

news.mapcamera.com

現在このデザインを観て格好いいと思う人はそう多くはないように感じるが、バブル期の熱狂が、もし続いていたとすると・・案外うけいれられたのかもしれない。

このエクステンショングリップ・・

7xi には写真のようなエクステンショングリップが付けられるのだけれど、エクステンションして指掛け部分に小指をかけようとしても、普通の男性ではカメラ全体をグリップする事自体が難しくなるという不思議仕様。デザインは良く出来ているけどね。このカメラはショルダーストラップではなくハンドストラップを付けて半ば手に固定し、未来的自動化撮影性能であたかも身体の拡張装置のように使う事をイメージしているのかも知れない。

 

再びエネルギーを注入

とりあえず切れてしまっていたリチウムイオン電池を交換してエネルギーを7xiに吹き込む。種々の自動機能付きの大食漢なので2CR5という大容量高電圧電池を使う。

フィルムは既に9枚撮影完了し、次が10枚目である事を示している。軍艦部の大型の液晶パネルが今のデジカメと変わらない雰囲気。ジョグダイヤルも前後2つで操作感はまんまデジカメだ。当時は先進的なインターフェースだったんじゃないだろうか。残念な事に背面の液晶パネルはまだ無い。それにしてもメニュースイッチが「P(プログラム)」しかない超未来志向。シャッターボタンを押す人差し指用にボディーがえぐられているデザインが斬新だ。個人的にけっこう気に入っているポイント。

 

Don't Think, Shoooot !

”Don't Think, Feeeel !” は映画「燃えよドラゴン」でブルースリーが少年に極意を伝授する時に伝える名言だが、7 Xi は撮影者に ”Don't Think, Shoooot !” と語りかける。なにしろ被写体を選んでシャッターを押すこと以外は全部でカメラがやってくれるからだ。xi 対応の xi ズームレンズを付ければズーミングによるフレーム決めですらカメラが行う。おまけにこのカメラはAFは常時ONの状態(勝手にAFし続けるw!)。

AFし続けるカメラはデジタル機も含めて初めてだったので最初これにはかなり面食らった。しかも基本OFFには出来ないのだ。AFホールド機能のあるレンズを使うと辛うじてレンズのホールドスイッチを押している間は大人しくしている。そういう道具として受け入れれば便利と考えられなくもないが、常にせかされている感はある。バッテリーも無駄に消費し続けるイケイケ仕様だ。

 

フィルム時代にデジタル時代を先取り:インテリジェントカード

xi シリーズの大きな特長としては小型のSDのようなカードをカメラに挿入し、様々な機能拡張を可能にしたインテリジェントカードシステムがある。

カードは基本的に単機能で、複数のカード機能を同時に拡張する事は出来ない。立派なCDケースのようなパッケージに入っており十種類以上のカードがあったようだが自分は撮影条件を記録できる「データメモリーカード」とソフト効果やズーミング効果を活かしてファンタジーな写真が撮影出来る「ファンタジーカード」のみ購入している。

小さめのSDカードのようなインテリジェントカードを挿入するスロットと各種メニューボタンを収めた装置がボディ右側の扉に収納されている。

インテリジェントカードを挿入した状態。なんのカードを挿入したか、窓を覗いて確認できる。今のデジタルカメラでいうところのファームアップによる機能追加みたいな感じ。時代を先取りしたユニークな仕掛けだと思う。

個人的には「ファンタジーカード」が楽しみ。これはAFのあったものとずらしたものと2枚を多重露光撮影し、普通のレンズでソフトレンズで撮影したような効果を得る機能。後継機のα-7にはインテリジェントカードシステムは継承されなかったが、このファンタジーカードの撮影機能は標準機能として継承されたらしい。ソフトレンズが一定の需要を得ていた前世紀らしいエピソードだ。

 

プラカメラの宿命:グリップ劣化

現在中古市場で流通している 7xi はグリップ部分の劣化が進んでいるものが大半だと思う。ひび割れ、欠損だ。幸いウレタン系ではないのか加水分解してベトベトになることはなさそうだ。後継機のα-7はウレタン系ゴムを多様してボディ全体がベットベトになるらしく手を出せずにいる。ウレタン系ベトベトは有機溶剤で除去するのも大変だし、除去したらツルツルのプラボディーむき出しで、良いところが何も無いのだ。

幸い自分の 7 xi はグリップ劣化が無い固体だったが、ここ数年で表面に劣化傾向が出てきているので将来は駄目かもしれない。

 

なかなか出掛けられずにいるけれど、次回はこの α-7 xi を散歩撮影のお伴にしてフィルムを撮り切る予定。